先般、私が審判をしていた時のことだった。
その局面は子どものAくんの勝ち将棋だった…。にもかかわらず勢い余って指すべきマス目を1つ飛び越えたところに飛車が移動!そのことを対局相手の大人のBさんが指摘、しかしAは一歩手前のところに行ったと言い張る一場面に遭遇した。結局Bさんが折れてくれたのだがおそらくお互いに「快適な気持ちの良い将棋だった」とは思わないだろう。将棋って盤面で勝ってなんぼのもの。
マナーとは・・・自他ともに気持ちよく過ごすために人間が意識し、様々な知恵から生まれた行儀・作法のことだそうです。たとえばナイフとフォークの持ち方がよくマナーを論ずる際によくでてきますが、これは食事をする際、他人と楽しく過ごしたり衛生面にも気づかいできる礼儀作法ということになりますね。
モラルとは・・・道徳・倫理のことで無意識のうちに心の中で善悪を判別して作り上げた概念ですがマナーとは幾分似たようなところがあります。マナーがなっていない。モラルが悪いといっても将棋を負けにされることはありません。
これに反してルールとは・・・いわば強制力をもった法律、守らなければ罰せられるわけです。ルールって将棋を指す上においてよく聞きますね。よく大会の際に協議方法、ルールについて説明します。なんてね。これに違反すると負けになることもあるわけです。
将棋において癖、習慣でマナーが悪い人を見かけます。取った駒を重ねたり手に持って指す。盤上の駒の向きがあっち向いてホイ!、手離れが悪い、対局時計を力いっぱい叩く、右手で指して左手で時計を押す、対局中に自分の読みを入れている際、指を机にパタパタさせる行為などなど・・・。
しかし、これらも一歩間違えるとルール違反を取られることがあります。
例えば駒の向きが指すたびにすこしずつ向きが変わっていつの間にか反対を向いていたり、指し手を迷った時に駒を行ったり来たりしていて瞬間的に手が離れた後で駒をもとの位置に戻す⇒二手指し、マッタというルール違反に発展。右手で指して左手で時計といった時に終盤で時間が無くなるとつい右利きの人が左側に時計が置いている時に左手で先に時計を押して右手で指す。これらはすべて反則ですね。つまり一歩誤ればマナー・モラルが悪い⇒ルール違反=即負けにつながるものです。
お互い気持ちのよい対局をするには対局マナーをしっかりと身につけて大会に臨みましょう。
その根底には対局相手だけでなく周囲にも気配り思いやることがポイントです。
マナーは自分のためのものではなく、社会全体のものである。すべての参加者がお互いの立場を理解しあい尊重しあうことがマナーの原点であり、自己主張とは正反対になります。お互いに相手を思いやる心が持てた時「気持ちの良い将棋」は近づいてくるのです。
結局AくんとBさんの対局の仲裁に入った私のジャッジは時間を短縮して指しなおしをしてもらうことにした。これがベストなのかどうかはわからないが、反則・ルール違反云々で勝敗云々ではなくやはり将棋は盤面できちんと決着したほうがよいと思ったから。